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スワン電気の発想の源は「手作りの精神」

無数のバネから1本のバネを選び出す。それだけでも2ヶ月はかかるという。

林さんは続けてくれた。「まぁ、エグザームの設計の物理的な基本構造は、このように物理で説明できるわけなんですが、本当のところは作ってみなくちゃ分からない(笑)。細かいところまでは、理詰めの計算ではダメなんですね。実際にはいくつもの試作品を作るところから始まります。たとえば、まず最初に割り箸と輪ゴムと爪楊枝などでミニチュアを作り、こんなものにしたいな、という漠然とした思いを形にしてみる。次にバネを選ぶ。これも最初は自分で針金を巻いてバネ自体を手作りしてみて、だいたい見えてきてから業者に発注するんです」

こうした地道な作業を繰り返す新製品の開発には、最低でも1年の期間がかかる。バネの選定ひとつにも、2ヶ月くらいはかかってしまうのだそうだ。

黒澤さんいわく、開発のいちばん最初のステップは、「子供の工作みたいに思える時もありますよ(笑)。開発担当者以外にとっては、ガラクタにしか見えないものもある。10個作って9個失敗して……。でも失敗作も含め、そのひとつひとつが、僕たちにとっては金の卵なんです」。

そんな数々の試作品のなか、スワン電器的な手作りスピリットを垣間見ることのできる面白い作品を見せてもらった。竹筒でできた卓上ランプである。

自然素材を使った製品を作ってみたいという希望が黒澤さんには以前からあったので、たまたま手に入った竹で作ってみたのだという。バネやワイヤーすら使わず、革のベルトでヘッド部分を固定する。「究極のローテクでやってみよう!」という遊び心が効いている。常に機能性とシンプルさを追求しているからこそできる発想なのかもしれない。明かり作りを楽しむ気持が伝わってくるような作品だ。

とはいえ「本当は青竹の美しい天然の色を出したい。でも竹の青はどうしてもあせてしまうから無理なんですよ(笑)」とのことで、残念ながら製品化の予定は今のところなし。こんなあたたかみのある副産物がふとしたきっかけで生まれるのも、スワン電器ならではだ。

こんな風にひとつひとつ、気になったものはかならず形にしてみることで製品を作りあげていく黒澤さんと林さん。二人が口を揃えて繰り返すのが「手作業」という言葉だ。実際、スワン電器の大きな特徴は、部品の設計も外注に頼らず、デザインも含め自社ですべての企画開発を行い、製品組立ても社内の工場で行うところにある。

「何事も自分たちの手でやってみないと血にも肉にもならない。自社にこだわって手作りを貫くのは、ノウハウをためる意味でとても重要なんです」と黒澤さん。

「失敗作も捨てられない。そのなかにもノウハウの蓄積があるから」と林さんも続ける。

スワン電器では「デザイナー」「開発者」といったふうに担当者が分かれておらず、各々がデザインも設計も含め、総合的に関わる。黒澤さんは「だからこそ、面白いアイディアも生まれる。そんなのできないよ、というところから、そのできないことを実現するための開発が始まるんです」と話す。


手作り精神と遊び心から生まれた、竹のランプの試作品。畳むと竹筒そのものになる。

黒澤さんと林さんがアイディアをひねり、試行錯誤を繰り返す、いわば「工房」がこちら。

「無理かもしれない、でもやってみよう」
そんな意気込みが表れた一つの部品

上部の関節でバネとワイヤーを繋げている接合部の部品。これをプレス加工で作るところにこだわりがある。

接合部の部品を、一枚の金属板からプレス加工のみで作る。複雑な手作業が必要となる。

スワン電器の開発力の緻密さを象徴する、もう一つの部品が、エグザームのアーム接合部に使われている一つの金具である。この小さな部品は、はじめ、合金を溶かして金型に流し込み鋳造する方法(ダイキャスト)で作られていた。だがそうすると、製造段階で稀に「鬆(す。鋳物にできた空洞の部分)」が入り、脆いものができてしまう可能性があるという。品質にさらなる安定性を持たせるため、コストは上がるものの、スワン電器ではあえて「プレス方式」を採用した。しかし、プレスはもともと直線的なものを作るのに向いている成形方法であるため、流面的な形に仕上げるのは難しく、この金具のように小さく複雑な部品をプレスで作るのは常識破りなのだという。

林さんによると「もともと、僕たちが手で作った部品が見本ですから、それを忠実に再現しようとすると、どうしても機械的に作ることができない形なんです。それをわざわざ、何段階もの手順を踏んでプレスで作る。大量生産は絶対にできない、手作業の工程なんです。ここまでのことをやってくれるプレス工場は、もう日本にはほとんどないでしょう」とのこと。

エグザームの部品計50点は、自社にある工場で組立てる。約10人で作業して、完成するのは1日で約300台だ。1台1台、漏電チェックをして完了。このように、エグザームはほとんど全ての工程が手作業で念入りに作られている。

特許を取得したエグザームのヘッド部分

エグザームがパーソナルライトとしても優れている理由は、前述した基本性能とあわせて、ヘッド部分の位置を自在に調節できること、光源が電球形蛍光灯であることなども挙げられる。

電球形蛍光灯は、電球に比べて電気代は約1/4で、寿命は約8倍。そのうえ電球のように熱を持たないので、細かい作業をする場合など、手元だけを照らしたい時、手でヘッドを掴んで、スムーズに自分の顔の下までピンポイントで照らすことができる。また、光自体が明るすぎない、というのも大きなメリットで、たとえば、パソコン脇においた場合、一般的なライトよりも画面への映りこみが少なくてすむ。省エネばかりでなく、実用性での計算も尽くされているのだ。また、蛍光灯の取り替えがしやすいように、カバーがワンタッチで外れる構造になっている。実際に使い始めてみると、こうした細かなことはとてもありがたい。ちなみに、このヘッド部分の開閉式構造は、スワン電器の特許である。

ところで同社では、現在、さらにシンプルな照明を目指し、バネを1本しか使わないデスクライトを開発中なのだそうだ。

「バネにこだわるなんて、とても地味でしょう? 振り返ってみれば、バネは太古の昔から、それこそ人類の歴史とともにある道具。一見、もうこれ以上の変化はないだろう、使い方も出尽くされているだろう、とも思える。そんなプリミティブな道具だけど、それでもやってみよう、まだいけるんじゃないか――そう考えて、あえてバネを進化させているんです。いや、進化というよりも深化といったほうがいいのかな」と黒澤さんは話す。よりシンプルに、より機能性を高く。その基本コンセプトは15年来変わらない。

黒澤さんも林さんも、それぞれ明かりの未来を見据えている。「近い将来、明かりの主流はLEDライトになるでしょう。そうなると環境は一変します。さまざまな形状の明かりができるでしょう」。そう前置きしながら、ふたりは今後考えられ得る明かりの形態や、照明の色、強さ、それによって人間はどう感じ、生活はどう変わるか……など、尽きることなく話してくれた。

そんなふうに未来の照明に自由に思いを馳せる反面、まさしく「手作り精神」を表すひとことが黒澤さんの言葉のなかにはあった。

「やっぱりモノっていうのは、あくまでも手先の延長じゃないといけない。だからこそ、まずアナログの限界を極めてみたいんです」。

スワン電器の作り出す未来の照明にも、期待したくなる一言だ。

林さんの物理問題

回答と解説です。


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