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シンプルさをつきつめるかのようなエグザームのデザイン。その姿から受ける華奢な印象どおり、このライトの構造には実に繊細な構造が施されている。ヘッド部分を持って片手で楽に操作できるのに、ブレもなくぴたりと止まる。この気持ちよいアームの動きこそ、エグザームの最大のポイントだ。なめらかな動きを支え、また同時にデザインに特徴を与えてもいるのが、バネとワイヤーである。企画開発を担当する黒澤英之さんは、「このバネとワイヤーがエグザームの心臓部」と、語り始めた。
「初代エグザームの時から、シンプルでヘッドが小さく、アームの動きが軽いもの、というコンセプトを貫いてきました。これまで改良を重ねる過程でもつねに、もっともっと軽くしてやろうじゃないかと、試行錯誤しながら、どんどんバネの数を減らしていったんです」
一般的なアームランプは、可動部を支えるため、アームの上下に計4本のバネを使うのがふつう。だが、フォルムをすっきりさせるため、エグザームにはバネが上下に一本ずつしか使われていない。そしてアーム下部にはバネの代わりにワイヤーを採用した。上下のバネの力をワイヤーで伝達することで動きを軽快にし、実用性と美しさを両立させている。
そして、このエグザームの真骨頂、永くピカイチに入選している根拠の一つが、アーム部分の耐久性である。なんと2万回の折り曲げテストにもびくともしない強さを誇っている。けっして派手なデザインや大袈裟な構造が施されているわけではないのだが、無駄を一切排した姿に、実用性と機能性に妥協しない真面目な仕事がされている。
「そんなに難しく考えないでください(笑)。バネとワイヤーでアームの動きをコントロールするのは、つまり、静摩擦と動摩擦の理屈ですよ。高校生の時に習う、物理の問題と同じです」と説明をしてくれたのは、初代エグザームから、15年以上開発に携わっている企画開発デザインチーフの林邦夫さん。
林さんは、エグザームの動きの軽さを、分かりやすい物理問題にして教えてくれた。
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林さんの物理問題
ちょっとした頭の体操です。遊んでみてください。

答えは次のページにあります。
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林さんは続けてくれた。「まぁ、エグザームの設計の物理的な基本構造は、このように物理で説明できるわけなんですが、本当のところは作ってみなくちゃ分からない(笑)。細かいところまでは、理詰めの計算ではダメなんですね。実際にはいくつもの試作品を作るところから始まります。たとえば、まず最初に割り箸と輪ゴムと爪楊枝などでミニチュアを作り、こんなものにしたいな、という漠然とした思いを形にしてみる。次にバネを選ぶ。これも最初は自分で針金を巻いてバネ自体を手作りしてみて、だいたい見えてきてから業者に発注するんです」
こうした地道な作業を繰り返す新製品の開発には、最低でも1年の期間がかかる。バネの選定ひとつにも、2ヶ月くらいはかかってしまうのだそうだ。
黒澤さんいわく、開発のいちばん最初のステップは、「子供の工作みたいに思える時もありますよ(笑)。開発担当者以外にとっては、ガラクタにしか見えないものもある。10個作って9個失敗して……。でも失敗作も含め、そのひとつひとつが、僕たちにとっては金の卵なんです」。
そんな数々の試作品のなか、スワン電器的な手作りスピリットを垣間見ることのできる面白い作品を見せてもらった。竹筒でできた卓上ランプである。
自然素材を使った製品を作ってみたいという希望が黒澤さんには以前からあったので、たまたま手に入った竹で作ってみたのだという。バネやワイヤーすら使わず、革のベルトでヘッド部分を固定する。「究極のローテクでやってみよう!」という遊び心が効いている。常に機能性とシンプルさを追求しているからこそできる発想なのかもしれない。明かり作りを楽しむ気持が伝わってくるような作品だ。
とはいえ「本当は青竹の美しい天然の色を出したい。でも竹の青はどうしてもあせてしまうから無理なんですよ(笑)」とのことで、残念ながら製品化の予定は今のところなし。こんなあたたかみのある副産物がふとしたきっかけで生まれるのも、スワン電器ならではだ。
こんな風にひとつひとつ、気になったものはかならず形にしてみることで製品を作りあげていく黒澤さんと林さん。二人が口を揃えて繰り返すのが「手作業」という言葉だ。実際、スワン電器の大きな特徴は、部品の設計も外注に頼らず、デザインも含め自社ですべての企画開発を行い、製品組立ても社内の工場で行うところにある。
「何事も自分たちの手でやってみないと血にも肉にもならない。自社にこだわって手作りを貫くのは、ノウハウをためる意味でとても重要なんです」と黒澤さん。
「失敗作も捨てられない。そのなかにもノウハウの蓄積があるから」と林さんも続ける。
スワン電器では「デザイナー」「開発者」といったふうに担当者が分かれておらず、各々がデザインも設計も含め、総合的に関わる。黒澤さんは「だからこそ、面白いアイディアも生まれる。そんなのできないよ、というところから、そのできないことを実現するための開発が始まるんです」と話す。
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各写真をクリックしていただくと、別ウィンドウで拡大した画像がご覧になれます。
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右が初代エグザーム。左が二代目となる現行モデル。両者とも、上部の関節より上側に1本のバネ、下側に1本のワイヤーがあり、これで動きを調節している。
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エグザームの設計を初代から担当している林邦夫さん。
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無数のバネから1本のバネを選び出す。それだけでも2ヶ月はかかるという。
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手作り精神と遊び心から生まれた、竹のランプの試作品。畳むと竹筒そのものになる。
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黒澤さんと林さんがアイディアをひねり、試行錯誤を繰り返す、いわば「工房」がこちら。
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上部の関節でバネとワイヤーを繋げている接合部の部品。これをプレス加工で作るところにこだわりがある。
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接合部の部品を、一枚の金属板からプレス加工のみで作る。複雑な手作業が必要となる。
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